行動食
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📅 2026年4月19日
「山の途中でエネルギー切れになってしまった」「食べすぎて重くなった」「何を持っていけばいいかわからない」——
登山の食事・行動食は適切に準備しないと体力低下や「シャリバテ」を招き、遭難の危険にもつながります。
この記事では、消費カロリーの目安・おすすめ行動食25選・水分補給の量・山ごはんの選び方・季節別の食料計画まで、登山の「食」に関するすべてをわかりやすく解説します。
1. 登山中のカロリー消費量の目安と計算方法
高カロリーで軽量な行動食が登山エネルギーを支える(写真:Unsplash)
登山時のカロリー消費量の目安
登山は有酸素運動の中でもカロリー消費量がとても大きい運動です。
体重60kgの人が登山をした場合の消費カロリーの目安は以下の通りです。
| 行動内容 | 消費カロリー(60kg・1時間) | 日帰り8時間での目安 |
| ゆっくり登り(一般道・傾斜あり) | 500〜600kcal | 4,000〜4,800kcal |
| 急傾斜の登り(標高差300m/h) | 700〜900kcal | 5,600〜7,200kcal |
| 稜線歩き(ほぼフラット) | 350〜450kcal | 2,800〜3,600kcal |
| ゆっくりした下山 | 350〜450kcal | 2,800〜3,600kcal |
| 標準的な日帰り登山(総合) | — | 3,000〜5,000kcal |
一般的な成人の1日の基礎代謝量(1,400〜1,800kcal)に登山による消費カロリーが加算されるため、登山当日は通常の2〜3倍のカロリーが必要になる計算です。
「シャリバテ」とは何か?防ぐ方法
「シャリバテ」とは、登山中に体内の糖質(グリコーゲン)が枯渇して急激な体力・気力の低下が起きる状態のことです。登山者の間では俗語として広く使われています。英語では「ボンク(Bonk)」とも呼ばれます。
症状は「急に足が重くなる」「頭が働かない」「めまい・吐き気」「ひどい空腹感」など。一度シャリバテになると回復に30〜60分かかることがあります。
✅ シャリバテを防ぐ3つのルール
- ① 1〜1.5時間に1回、こまめに行動食を食べる(満腹にならなくていい。少量ずつ継続的に)
- ② 「空腹を感じる前に食べる」(空腹を感じた時点でシャリバテが始まっている)
- ③ 出発前に必ずしっかり朝食を食べる(登山前日・当日朝の炭水化物補給が重要)
2. 行動食に求められる3つの条件
① 携行性:ザックから取り出しやすいこと
登山中はザックを降ろさずにすぐ食べたい場面が多くあります。ジップロックや小分けパックで「歩きながら食べられる」形にしておくことが理想的です。
- 個包装・ジッパー付き小袋でポケットから取り出せること
- 暑さや振動で溶けたり形が崩れたりしないこと(チョコは溶けやすいので注意)
- 手がべたつかないもの(手袋をしたまま食べやすい)
- ゴミが少ないもの(山ではゴミを持ち帰る義務がある)
② カロリー密度:重量あたりのカロリーが高いこと
登山のザックは重さが大敵です。同じ200kcalを補給するなら、100gのものより50gのもののほうがいい。「重量あたりのカロリー」を意識して選びましょう。
- 優秀(500kcal/100g以上):ナッツ・チョコレート・羊羹・エネルギーバー・サラミ
- 普通(250〜400kcal/100g):おにぎり・餅・クッキー・ドライフルーツ
- 効率が悪い(100〜200kcal/100g):バナナ・りんご・サンドイッチ(荷物になる)
③ 消化吸収速度:素早くエネルギーになること
行動中は消化器系への血流が少なく、重い食事(ラーメン・揚げ物)は消化に時間がかかり、かえってエネルギーが出にくくなります。行動食は消化が早い糖質・中鎖脂肪酸を含むものが理想です。
- 即効性(15〜20分で吸収):ゼリー飲料・スポーツドリンク・ブドウ糖タブレット
- 持続性(30〜60分で吸収):羊羹・おにぎり・ドライフルーツ・クッキー
- 長持ち(60分〜):ナッツ・チーズ・サラミ(脂質が多いため)
3. おすすめ行動食25選|カロリーと特徴を一挙紹介
山での食事は普段の何倍も美味しく感じる(写真:Unsplash)
🍬 和系定番行動食(日本の登山者に長く愛される)
1
羊羹(ようかん)
約175〜200kcal(1本60〜65g)。個包装で食べやすく、溶けないのが最大の利点。塩入り羊羹は塩分補給も兼ねる。登山界の「歴史ある最強行動食」。
300kcal/100g
2
おにぎり(コンビニ・手作り)
約180〜220kcal(1個)。炭水化物が豊富で腹持ちが良い。梅・昆布など塩分を含むものが○。ただし保冷必要で夏山は腐敗に注意。
210kcal/100g
3
干し芋
約290〜310kcal(100g)。食物繊維豊富で腸の調子を整える。甘みがあって食べやすく、胃に優しい。個包装タイプがおすすめ。
300kcal/100g
4
塩分チャージタブレット
約540〜600kcal(100g)。登山中の塩分・ミネラル補給専用。水分と一緒に1〜2時間ごとに1〜2粒摂取。夏山・汗をかいたときには必携。
570kcal/100g
5
チーズ(個包装)
約300〜350kcal(100g)。タンパク質・脂質・カルシウムを補給。腹持ちが良くゆっくりエネルギーが出る。六Pチーズ・醤油クリームチーズが登山に人気。
320kcal/100g
6
柿の種・おかき
約480〜520kcal(100g)。塩気があり食欲が落ちているときに食べやすい。小袋タイプが携行に便利。ミックスナッツと組み合わせると最強コンビ。
500kcal/100g
7
砂糖入り梅干し・梅ペースト
梅干しの酸味・塩分が疲労回復に効果的。クエン酸が乳酸を分解して「足の疲れをとる」と言われる。甘い梅干(はちみつ梅)なら食べやすい。
30〜50kcal/粒
8
切り餅(事前に焼く・真空パック)
約100〜110kcal(1個)。炭水化物の塊。バーナーがある場合は山頂でお雑煮やおしるこにしても。事前に焼いて真空パックして持参する登山者も多い。
230kcal/100g
🍫 洋系・お菓子系行動食(軽くて食べやすい)
1
ミックスナッツ
約570〜600kcal(100g)。アーモンド・くるみ・カシューの組み合わせが理想。脂質と微量ミネラルを豊富に含みゆっくりエネルギーが持続する。無塩より有塩の方が塩分補給を兼ねる。
590kcal/100g
2
ビーフジャーキー・サラミスティック
約250〜400kcal(100g)。タンパク質が豊富で筋肉疲労の回復に好適。塩分・うまみが食欲増進にも。かさばらず常温保存可能。
350kcal/100g
3
チョコレート(板チョコ・準チョコ)
約530〜560kcal(100g)。カカオポリフェノールが疲労軽減に効果的。ただし夏場は溶けるのが難点。山では溶けにくい「準チョコレート(コーティング系)」が向いている。
550kcal/100g
4
ソイジョイ・カロリーメイト
約200kcal(1本)。食物繊維・大豆タンパクを含むバランス系バー。水なしで食べやすい。ザックの隙間に入れやすいコンパクトさが◎
400kcal/100g
5
ドライフルーツ(マンゴー・アプリコット)
280〜330kcal(100g)。天然の糖質で素早くエネルギー補給。カリウム・ビタミンを含む。果物の甘みが高山での食欲低下を防ぐ。ただし食べすぎると胃に重い。
310kcal/100g
6
CLIF BAR・パワーバーなど海外製エネルギーバー
約240kcal(1本)。オーツ・ナッツ・ドライフルーツを圧縮したスポーツ向けバー。持続するエネルギーが特徴。Amazonやスポーツショップで購入可能。
380kcal/100g
7
スポーツゼリー(ウイダー in ゼリーなど)
約100〜180kcal(1袋)。溶けない・飲み物と一緒に消化不要の即効性が強み。高山や疲弊時に最も吸収が速い。重くなるので数個だけ持参。
約130kcal/袋
8
クラッカー・クルトン
約420〜450kcal(100g)。軽くて炭水化物が豊富。バターやチーズと一緒に食べると美味。崩れやすいのでジップロックに入れて持参する。
430kcal/100g
9
グミ(ハリボーなど)
約330〜350kcal(100g)。糖質のかたまりで即効性が高い。手が汚れない・溶けない・小腹が空いたときのつまみ食いに最適。子どもがいる登山グループにも人気。
340kcal/100g
⚡ 高機能・スポーツ向け行動食(中上級者・長時間行動向け)
1
マルトデキストリン(粉末)スポーツドリンク添加
スポーツドリンクに溶かして飲む高機能糖質粉末。水と一緒に素早くエネルギーになり、消化器への負担が少ない。超長時間行動(8時間+)向け。
390kcal/100g
2
麻婆豆腐の素・レトルト(バーナーありの場合)
山頂や稜線でバーナーを使って温かい山ごはんを楽しむ際のご当地レトルト。水分補給も兼ね、体を温める効果がある。山頂で食べる温かい食事の満足感は格別。
150〜200kcal/袋
3
フリーズドライご飯・アルファ米
お湯(または水)を入れるだけで食べられる軽量ご飯。1袋300〜400kcal。1泊以上の登山や山小屋のない場所でのテント泊に必携。「白ご飯」の安心感が山では格別。
350kcal/食
4
BCAA(分岐鎖アミノ酸)ドリンク
オクタン価は低いがタンパク質分解・筋肉疲労軽減に効果的。長時間の下山での筋肉痛予防に有効。アミノバイタルのドリンクやタブレットが便利。
低カロリー(機能重視)
5
みそ汁(フリーズドライ・お湯用)
体を温める・塩分補給・水分補給を一度にカバーできる万能アイテム。バーナーとクッカーがある場合は必ず1袋携帯したい。疲れた体に染みる。
30〜50kcal/袋
6
コーヒー・ティーバッグ
カフェインが疲労感を一時的に軽減し、山頂でのコーヒーブレイクは最高の休憩になります。ただし利尿作用があるため、水分摂取量を多めに調整すること。
カロリーほぼゼロ
7
カップラーメン(山小屋・お湯あり環境)
山小屋でのカップラーメンは山頂でのご褒美文化の一つ。約300〜400kcal。塩分・炭水化物を大量補給。体が疲れているときの「お湯+ラーメン」の満足感は天下一品。
350kcal/食
8
虎屋のミニ羊羹(高級)
168kcal(1本)。老舗和菓子の品質で甘さ・風味ともに行動食の中でもトップクラスの満足感。山登り仲間へのプレゼントや自分へのご褒美として持参する登山者も多い。
280kcal/100g
4. 登山中の水分補給|量と種類と飲み方の正解
のどが渇く前にこまめに飲もう(写真:Unsplash)
必要な水分量の目安
登山中の水分必要量は「行動時間・標高・気温・発汗量」によって異なりますが、一般的な目安として以下のように計算できます。
💧 水分補給量の計算式
必要水分量(ml) ≈ 体重(kg)× 行動時間(時間)× 5〜10ml
- 体重60kg・8時間行動:2,400〜4,800ml(気温・発汗量によって大きく変わる)
- 涼しい日・平均的な発汗:60 × 8 × 5 = 2,400ml
- 夏山・大量発汗:60 × 8 × 10 = 4,800ml(500mlペットボトル約10本分)
「のどが渇いてから飲む」はNG
のどの渇きを感じた時点ですでに体重の1〜2%の脱水が起きており、集中力・体力が低下しています。登山では「のどが渇く前にこまめに水を飲む」が基本ルールです。
目安:1時間に200〜300ml(コップ1〜1.5杯程度)を少しずつ。一気飲みは胃に負担をかけます。
水・スポーツドリンク・塩分タブレットの使い分け
| 飲み物 | 特徴 | おすすめの場面 |
| 水(ミネラルウォーター) | ピュアな水分補給。コスト安 | 行動中の基本水分補給 |
| スポーツドリンク(薄めた粉末型) | 糖質・塩分・ミネラルを同時補給 | 汗が多い夏山・長時間行動 |
| 麦茶 | カフェインなし・ミネラル補給 | 子どもの登山・カフェイン過敏の方 |
| 塩分タブレット+水 | 精確な塩分補給 | 大量発汗後・夏山・足がつる人 |
| コーヒー・緑茶(温かい) | カフェイン覚醒効果 | 休憩時・朝の集中力アップ(利尿作用に注意) |
⚠️ 低ナトリウム血症(水中毒)に注意:水だけを大量に飲み続けると体内のナトリウムが薄まって「低ナトリウム血症」を起こすことがあります(頭痛・吐き気・けいれん)。長時間行動中は塩分タブレットやスポーツドリンクを水と組み合わせましょう。
5. 山ごはん(昼食)の選択肢と準備方法
山頂で食べるごはんは何倍も美味しい(写真:Unsplash)
山ごはんのスタイル別比較
| スタイル | 準備難易度 | 重量 | おすすめ |
| コンビニパン・携行食のみ | ★(最小限) | 軽い | 短時間日帰り・初心者 |
| コンビニおにぎり+行動食 | ★★ | 普通 | 日帰り標準 |
| バーナー+カップラーメン | ★★★ | やや重い | 中級者・山頂にこだわりたい方 |
| バーナー+アルファ米・山飯 | ★★★★ | 重い | 1泊以上・山飯こだわり派 |
| 山小屋での食事を購入 | ★(装備不要) | なし | 百名山・有人山小屋ルート |
「山の火器使用ルール」を守る
バーナー(ガスストーブ)を使った調理は、登山道・山頂・山小屋に関わらず火気使用禁止エリアがある山があります。特に富士山・尾瀬・高山の植生保護エリアでは禁止されていることがあるため、事前に山のルールを確認してください。
- 国立公園内の登山道では火気使用を制限している場所が多い
- 山小屋の敷地内は「小屋のバーナー・コンロ」を使うルールのところも
- アルコールストーブは風が強い場所では危険なため、山ではガスバーナー(OD缶)が基本
6. 季節別・難易度別の食料計画
春・秋山(4〜5月・9〜11月)
登山に最適なシーズンですが、朝晩の気温差が大きいです。気温が低い早朝は食欲が出にくいことがあるため、食べやすい甘い行動食を多めに持参します。
- 行動食:羊羹・ナッツ・ドライフルーツ・エネルギーバーでバランスよく
- 昼食:温かいカップラーメン・スープはご褒美になる
- 水分:気温低めで汗は減少するが、乾燥により呼気での水分消失が大きい。こまめに飲む
夏山(6〜8月)
高温・高湿度で発汗量が激増します。食欲が低下しやすい一方で、カロリー補給は欠かせません。
- 食欲が落ちても食べられるものを優先:フルーツ系ゼリー・グミ・梅干し・スポーツドリンク
- チョコレートは溶けるため、チョココーティングのものかナッツに切り替える
- おにぎりは腐りやすいため、昼には食べきる。コンビニよりも梅・昆布・塩気のあるものを選ぶ
- 水分は1.5〜2倍に増量し、塩分タブレットを必ず携帯する
冬山・低山(12〜2月)
気温が低いと体が熱を維持するためにカロリー消費量が増えます(通常の1.2〜1.5倍)。また食料や水が凍ることがあります。
- チョコレート・脂質の多い食料は気温低下で固くなることがある。常温でも食べやすいものを選ぶ
- 水は体内に近い場所(内ポケット)で保温。凍結防止のサーモボトルが有効
- 温かいスープ・ホットドリンクは体温維持に効果的。サーモス(保温ボトル)で持参する
- 消費カロリーが多いため、行動食を通常より30〜50%多めに用意する
高山帯(標高2,500m以上)
高度が上がると消化器系の機能も低下し、食欲不振になりやすいです。また沸点が低くなり(富士山頂では約87℃)お湯を沸かしてもラーメンが「完全には煮えない」ことがあります。
- 食欲がなくても高カロリーを摂れる行動食(ゼリー・羊羹など)を優先
- 消化に重いもの(油もの・揚げ物)は避ける
- インスタントラーメンはやや生麺感が残ることを覚悟し、柔らかいものを選ぶ
7. 食料の重量管理とザック収納のコツ
食料全体の重量目安
日帰り登山と泊まり登山では食料の量が大きく変わります。
| 登山スタイル | 食料・水の重量目安 | 内訳 |
| 日帰り(〜6時間) | 1〜1.5kg | 水1L + 行動食500g程度 |
| 日帰り(6〜10時間) | 2〜2.5kg | 水1.5〜2L + 行動食・昼食1kg |
| 1泊2日(山小屋泊) | 3〜4kg | 水2L + 全食事 + 行動食 |
| 1泊2日(テント泊) | 4〜6kg | 水2L + 自炊食料 + 調理器具 |
ザックへの収納テクニック
- 行動食は上部・サイドポケットへ:歩きながらすぐ取り出せる場所に配置。1〜1.5時間ごとに食べる量を「1セット」として小袋に分けておくと便利
- 昼食は中段へ:休憩で取り出すものは中ほどに。ぐちゃっとならないようにハードケースや弁当箱に入れる
- 水筒・ハイドレーションは重心近くへ:水は重いので腰に近い下段・背面に近い内側に置くと体への負担が少ない
- ゴミは最小化するパッキング:お菓子の外袋は家で捨て、中身だけジップロックに移して持参すると軽くなりゴミも減る
💡 「一袋の中に何種類も入れる」が賢い:ジップロック1袋に「羊羹1本・塩飴5個・ナッツひとつかみ・ビーフジャーキー2本」のような行動食セットを作っておくと、出発前の準備が楽になります。
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